[Jナギ]
ぎち。
握り込めた指の中で白い手首が身動ぐ。
「痛いな、アイドルに傷付けたら高く付くぞ?」
おどけた声で諭すナギの笑顔は少し歪んで。
「ごめんね?でもナギすぐ逃げるじゃ?ん」
完璧な笑顔を貼り付けて言えば出来損ないの笑顔はまたひきつった。
(大事な物なんて他に無いよ)(君が泣いてくれるなら)
[Jナギ]
へらり、薄っぺらく笑えば、へらり、紙みたいに笑みが跳ね返ってきた。
「ね、それおいし~?」
「まあまあだな」
リフレの新メニューを突付きながら、赤い目は絶えず視線を泳がせている。
こんな時までも諜報根性。
嘔吐が出る。
「僕にもちょ~だい」
「ん、おー」
薄い唇を食んだらミートソースの味がした。
[クラA]
片手で掴めてしまえそうな小さな頭にゆるりと手を伸ばす。
鷲掴むことはせずに眺めのプラチナブロンドに手を伸ばしたら、文字を追っていた大きな眸がくるりと上を向いた。
「・・何か、用か?」
「お前が」
「ん?」
「お前があまりに動かないものだから、人形ではないかと疑惑ったんだ」
「馬鹿じゃないの」
[Kナギ]
「慰めてやろっか」
けろり、笑った顔が泣きそうに見えて、腹に乗せられた腕を払った。
蜂蜜色が傾ぐ。
「そんな簡単に言うな」
「なに?もしかして俺に抱かれたい派?」
「少し黙れ」
不躾に人の体の上に乗っかった痩身を横に転がして、無理に抱き締めた。
「っちょ、」
「お前は、もう少し自分を大切にしろ」
[Jナギ]
引き攣ったその顔を見るのが好きだよ、って言ったら急度、この腕から逃げていってしまうだろう。
と思ったらもうこの口から溢れてしまっていたらしい。
「うーわ、悪趣味」
「え~そんなことないよ~」
触れた舌先がびくりと跳ねる。逃げてよ、逃げて、逃げ回って、逃がさないから。
噛み千切って禁めたい。