2013/07/20 Category : 古い小説など 刹那ソフォキャット[赤炎/OP] 現パロ赤炎の朝 息を詰める、その瞬間。 (・・重い) 瞼が、である。 夢から目覚める間際。 ふわり、浅く揺蕩っていた意識が、ぐん、と上に引っ張られる感じ。 喩えるなら崖から飛び降りた時みたいな(それはさすがに物騒だが)、そんな浮遊感だ。 それを心地よく思う反面、まだまどろみに浸かっていたいとも思う。 まだ、もうちょっとだけ、このまま。 寝返りを打とうと身を捩ったら、首の後ろに違和感を覚えて。 なんとなく感じた居心地の悪さに、エースは重たい瞼を抉じ開けた。 (うお!?) 眼を開けて真っ先に飛び込んできたものは、鮮烈な赤。 暫く置いて、その鮮やかな色彩が横で眠る男のものだと気付く。 同時に、寝心地の悪さの原因も。 昨晩は確かに枕に預けていた自分の頭が、何時の間にか、男の腕に据えられていた。 ごつごつと骨ばって節くれだった逞しい腕は、柔らかい枕には程遠い寝心地。 首の下で太い血管が脈打っているのがわかって、訳は判らないけどなんだか情けなくなってきた。 何が哀しくて成人男子の身でおっさんの腕枕を受けているんだろう俺。 どうせならむちむち美女の膝枕の方がいいのに。 柔らかいお姉さんの方が良い筈なのに、それなのに結局離れられない俺は、多分もう正気の沙汰では無いのかも知れない。 もぞもぞとシャンクスが動いて、眼前にある薄い瞼がぴくりと痙攣した。 起きるかな、と思ってその睫毛が微かに震えるのを見ていたエースは、結局その目が開けられる気配は無いのを確認すると、自信ももう一度眠りに付こうかと試みる。 しかし一度目が覚めてしまったものは中々寝付けなくて、いつもは寝ようと思わなくても飯食ってたら寝れるのにな、とか思ってみたり。 とりあえず耳の下から動脈の動きを感じるのはそわそわして大変落ち着かないので、頭を腕から外そうと思い、エースは上体を軽く浮かせた、時。 「まだ、寝てろよ」 穏やかな低い声が鼓膜を震わせて、強い力で抱き込まれて、再び白い敷布に沈んで。 額をシャンクスの鎖骨の辺りに押し付けるような形になって、動脈の音なんかよりも明瞭に脈を打つ心臓の音なんかが聞こえてしまって、やっぱり居心地が悪くて。 「起きる、から、離せ」 「いやだね」 腕を突っ張って離れようとしてみたけど、悔しいことにびくともしない。 「おいオッサ、」 エースの抗議の声にシャンクスはゆるり、笑って。 「ン、」 続く罵声は、穏やかに笑う男の少々酒臭い口腔に飲み込まれてしまった。 「いいから、黙ってろよ」 不敵に笑った男はゆっくりと再び瞼を閉じ、残されたような形になったエースは、寝付くことも出来ず、かと言って起き上がることも出来ず、次にシャンクスが目覚める時まで一人で狼狽する羽目になったとか。 *** 元拍手文 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword