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愛し子よ[赤炎/OP]

現パロ赤炎でエースくん誕(2011)







じりじり、鼻先が悴む寒さに、かちかちと歯の根を鳴らしながら、ひとり。

(さっみィなァ…)

指先を擦り合わせるのは、大分前に止めた。
髄まで冷えた指と指を寄り合わせても、ちっとも温かくならないから。

(あと、5分)

風は無い。

ただ凍ったように冷たい夜気がひたひたと体に染み込んでいくような心地がして、末端から順に、自分では無くなったかのように感覚を失っていく。

ふるり、背中から這い上がった冷気が骨の髄から体を震わせるが、それでも、エースは家の中に入ろうとしなかった。

目蓋を閉じれば、きん、と冷えた空気が脳髄まで浸るようで、ほう、と吐いた息が白い。

(あと、3分)

上着の袖を捲り、蛍光に光るデジタル時計をちらりと確認する。
日付も確認できる、機能重視の安くさい黒の1000円の時計。

23時57分。

あと僅かで、今日という日が終わり、そして、ああ、今年も、今年も年が明ける。

耳が痛い。比喩ではなく物理的に、外気に曝され過ぎた耳は、冷たさを通り越してじんじんと痛む。

ああ、明ける、うまれるのだ。

いたみを

(産まれる、もうすぐ、うまれる)

大罪の顕現、鬼子の世に産まれ落つるや。


よん、

部屋の中で、テレビが煩く年の瀬を騒ぎ立てている。

さん、



擦るのを止めた指先を、口許に持ってきて、鼻先を覆った。

いち

からり、ベランダの立て付けの悪い戸がスライドする音。

「あけま「ありがとう、」」

呟いた声に、一段低い声が静かに重なって。

ゆるり、アルコール臭い呼気と、ふわり、後ろから肩に掛かる熱が。

「アンタ、酒臭ェ」
「ありがとな」

穏やかな声に、なんだか反発してやりたい気になって、悪態を着いてみたけれど、いつもみたいに乗っからずに、シャンクスはゆっくり、もう一度感謝の辞を呟いた。

「何がだよ」

首にかかる赤い髪は柔らかくて、擽ったくて。

「生まれてくれて、ありがとう」

なんだよ、今の、卑怯、反則。
少し腕を緩めて、わざわざ顔を正面に向けたシャンクスの、目が、あまりに静かで、わざわざ俺を呼び戻しに来たらしい痩身が、とても寒そうだったから。

「ありがとう」

何枚も着こんだフリースの襟の間に鼻先を押し付けて、カラカラに乾いて張り付いた喉で、呟く。

こんな俺を、あいしてくれて、ありがとう









HappyBirthday、ポートガス・D・エース!
現パロだけど精神性が原作沿いというトリップものだった。













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