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zekku

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流れず着水[赤炎/OP]R-15

かわいくないのがかわいい。



それは宛ら、蝋燭に灯り心許なく揺蕩う炎のように。
ゆるり流れる空気にちりちりと紫煙を揺らがせ消えそうに細く棚引いて。
いかにも儚く消えそうな体の癖に、触れるとたちまち燃え広がり身を焦がすそれ。
まったく真実に、性質が悪いものだ。
(いや、性質が悪いのは俺の方か)
宵も暮れ、大して広くもない船室を支配するのは怠惰な空気。
怠惰な空気であるのだがしかし、ぴりりと緊張が走った空気でもある。
水面に張った薄い膜を破るように、厳かな緊張を持って静かに机上の酒瓶に手を伸ばす。
ビンを引っ掴んで、酒を煽って。
強いアルコールの喉を焼くような刺激が心地良くて、喉を鳴らすようにゆっくりと飲み下した。
視線を横につ、と動かせば、窓の外を見ながらちびりちびりと瓶の口を舐めるように酒を飲む青年が眼に入る。
別段酒に弱いわけではなく、どちらかと言えば強い酒を煽るのを好んでいる筈な彼が眉を顰めてちびちび酒を飲むのは一体どうした訳だろう。
どうした訳か、とは。
自分で思ったことを反芻して笑う。
そんなこと、わかりきっているというのに。
「エース」
静かに空気を揺らせばぴくりとわかりやすく跳ねる肩。
意固地にそっぽを向き続ける青年に近付こうと立ち上がれば、潮風に晒されて少し痛んだ床板がぎいぎい嫌な音を立てる。
近付いてくしゃり、癖の強い黒髪を右手で掻き回せば漸く、髪と同じく黒檀色の目が俺を映した。
「・・なんだよ」
ぐしゃぐしゃと無言で髪を掻き回す俺に不機嫌そうな、訝しげな声。
ああ怒ってんな、と頭の隅で思いながら、楽しい、と思ってしまうのは悪い癖だ。
「なんで怒ってんだよ」
「別に」
(別に、ねぇ)
いかにも訳ありそうな所在なさげな顔して何を言っているのだろう。
そんなにも、物欲しそうな、顔で。
「ごめんな」
ぐしゃぐしゃと掻き混ぜていた髪をゆるり、撫でるように梳く。
ぎらぎらした目はつい、と下に伏せられてしまった。
「なにが」
「俺が悪いんだろ?」
なぞるように髪を梳いていた手を耳から首へ降ろせばざわり、露出された肌が粟立つのが掌から伝わって。
その顕著な反応に小さく笑みが漏れる。
「あんたのそういうとこ、嫌いだ」
掠れた声で空気を震わせ、エースは肌を滑る俺の手を押し留めた。
まだ目は伏せられたまま。
「嫌いは、傷つくな」
「そんなの」
思ってもいない癖に、とほとんど消えるように言いながら押し留めた手を取る。
取った手をどうするのかと見ていたらがぶり、人差し指を噛まれてしまった。
甘噛みなんて生易しいものではなく、歯形を残すように、きつく。
食い千切らんばかりに噛んだ後、放すかと思いきや、ずるり、舌を這わされた。
自分がどんな顔をしているか、わかっていないのだろうかこの餓鬼は。
どろりとした悋気を内に押し留めたような顔。
どうしようもなく物欲しそうな顔をしていやがるのに、そんなことは一言も言わない、頑固な餓鬼だ。
「思っているさ」
「あ?」
されるがままにしておいた指を引き抜き、噛み付くようなキスを送る。
甘いキスよりもこっちの方がずっと核心に近づけるのを知ってるから。
「お前に嫌われたら、傷付く」
口角を上げて微笑みながら言えば、呆れたような視線。
「・・・あっそ」
どうせ俺の言葉など半分も信じていないのだろう。
それでいい、と思う。
信頼よりも、嫌疑の方がいい。
その方がより、心を乱すことができるから。
「可愛くねぇなぁ」
「俺に可愛げ求めんのはお門違いだろ」
からんと酒瓶が転がり、どぷりと中の液体が零れる音。
足元の床を濡らし始めたアルコールは無視して、いささか乱暴な動作でエースの肩を掴み寝台に縫いとめて。
「なんだ、怒ってるんじゃなかったのか」
「怒ってるよ」
きゅ、と広い額に皺を刻んで、怒っているというよりは今にも泣き出しそうな顔だ。
怒っている、フリをしたい時の顔。
「そっか、怒ってんのか」
「おう、怒ってる、う」
少し強めに首筋に歯を立てればひくりと喉が鳴った。
黒曜石の瞳が揺らぎ、徐々に情欲に濡れて。
信念を持った真っ直ぐな瞳や敵を威嚇するようなぎらぎらした瞳、向日葵のような無邪気な笑顔も好きなのだけれど。
若くて濁りない瞳を堕とすのは、背徳な快楽だ。
くっきりと隆起した鎖骨に舌を這わせ、若く張りのある肌に指を滑らす。
息を詰める音が頭上で聞こえて、思わず口角が上がった。
鍛えられた腹を掠めるように撫で、迷い無く下肢に手を伸ばせば、ふるり、掌の下の肌が震えて。
焦らすように内腿を撫でれば、もぞもぞと足が動く。
「・・どうした?」
「っは、・・悪趣味」
おっさん、と付け足された声は無視してかちゃかちゃと音を立ててベルトのバックルを外し、ずるり、一気に下衣を引き摺り降ろして既に欲望を示し始めている彼自身に触れれば、大袈裟に背がしなった。
ばさばさと黒髪が白い布地に散って、溶けた瞳と視線がぶつかる。
全く、いつからこんな表情をするようになったのだか。
早急な快楽は与えず、ゆっくりじわじわと煽るように触れれば、びくりびくりと跳ねながら快楽に耐えるようにエースはきつく目を閉じる。
きゅうと寄った眉根に唇を落として、でも確信的な刺激は与えない愛撫を続けて。
こいつは強く手酷く抱かれるのを好むくせに、強く抱けば己の殻を堅牢なものにする。
だから彼がもどかしさに音を上げるまでに丁寧に焦らして抱くのが常であった。
常であった、という程に回数も重ねていないのだが。
「なぁ」
耳朶を食み、鼓膜に吹きかける様に問う。
「どうしてほしい」
「っ・・・ん、」
ぴくりぴくりと瞼が震え、奥歯を噛み締めたのがわかる。
意地でも吐息すら漏らすまいと耐えている姿はいじらしいけども、そろそろ退屈。
「俺は別に、このままでもいいんだがな」
「・・・っホント、悪趣味、だ」
答えを促すように自身を撫で上げれば、ひっ、と小さく息を呑む声。
「ん、・・さっさと、イかせろ、よ・・!」
「色気ねぇなー」
「っるせ・・!」
ご希望通りに、と囁いて強く握りこみ上下に扱けば、若いだけあって至極あっさり上り詰めて。
「は、っ出、る・・!」
「イけよ」
「・・っん、ん・・!」
白い喉を反らせ血色が失せるほどに唇を噛み締めて、くぐもった嬌声と共に弾けたエース。
勢い良く飛び出た白濁を掌で受け止めて、胸で息をしている彼を見る。
「・・溜まってたのか?」
「っは、若ぇん、だよ」
薄く汗が浮いた広い額に口付けて、吐精直後の敏感な体に再び熱を灯すように手を這わす。
湿った黒髪が、頬に張り付いている。
今にも唇を噛み千切らんばかりだったので無理矢理指を噛ませれば、咥えさせた指を躊躇いがちに舐められた。
ざらり、指を舐め上げて、最後にリップ音のサービス付きで。
「随分と熱心なこって」
「も・・さっさと、っ突っ込めよ」
揶揄するように呟けば、開き直ったのか何なのか、薄い唇を吊り上げてにやりと笑って俺を見た。
媚びるわけではなく、強請るような挑発。
「身も蓋もねえ」
しなやかに均整の取れた脚を取り抱える。
これはエースが一番嫌がる体位。
「ってめ、シャンクス・・!」
「さっさと突っ込まれたいんだろ?」
強がっていられるのも今のうちだと心の中で思って、顔には出さずに額にキス。
作戦変更、焦らすのはやめて慣らすのもそこそこに、彼の中へと押し入った。
「いっ・・・あ!」
エースは無理な挿入による激痛を遣り過ごすようにシーツに強く頭を押し付け、大きく背を反らす。
その汗ばんだ肌に歯を立てながら、じりじりと中を押し広げて侵食する。
「っ相変わらず、でけぇよあんた」
「はは、どーも」
息が収まるのを待たずに乱暴に腰を揺すれば、きつくシーツを掴む指先が白くなっていた。
「ん、く・・っは、」
息継ぎしようと喘ぎ、でも声は漏らすまいと顔をぐしゃぐしゃにしながら歯を噛み締める姿に、痛ましさと、心苦しさと、ほんの少しの加虐心。
こんな時くらい人を頼ることを覚えてもいいものの、この餓鬼は。
小さく溜息を吐いて、白く変色するくらいきつくシーツを握り締めた手を解き、己の首に掴まらせた。
「ほら、噛んでもいい」
「っふ、んん、」
汗で湿った艶やかな黒髪がばさばさと首筋にかかる。
殊更優しくその髪を梳いてやれば、黒曜石は泣き出しそうに揺らぐ。
「辛いなら声出せ」
「い・・やだ」
「・・しょうがねえなぁ」
ぐいり。
猫のような肢体を深くシーツに縫い止め、深く腰を沈めて、ついでに指を素直にならない口に突っ込んだ。
「ふあ!?っあ、あう、ああっ」
「それでいい」
指を突っ込んだ所為で閉じることができなくなった口からは止め処なく嬌声が溢れて。
ついでにこの強がりでどうしようもない餓鬼の弱音も全部吐いてしまえばいいのに、とも思う。
兄としての鎧を剥ぎ安らぎを与えるのがあの海賊団の役目ならば、強者の鎧を暴いて弱さを曝け出させるのは俺の役目であればいい。
「好きだ」
容赦なく突き上げて、限界ぎりぎりまで導いて。
ぎりぎりと肩口に食い込む爪さえ愛しい。
「っおれ、は、あ、嫌い、だっ」
「可愛くねえなぁ」
ああ、全く、可愛くて可愛くて仕方がない。
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