大学生バッツ×高校生スコール。同棲中。
ほろり、ほろほろ。
それはひたひたと、指の先から侵す、
「レポート終わんない~」
「自業自得だろう」
紙束を片手に愚痴れば、スコールは振り返りもしないで言った。
「俺は手伝わないからな」
「けち」
「年下に手伝わせてどうする」
「だってスコール俺より頭いいだろー」
これはホントで、半分嘘。
スコールが頭がいいのは、ホント。
「おにーさん寂しいなぁー」
「誰がおにいさんだよ」
「え?俺」
あ、呆れた。
「うそうそ、ごめん」
くしゃり、手を伸ばして、少しクセのある細い髪に触れる。
さらさらと指の腹を滑る感触が気持ちいい。
髪で遊んでたら、ぱしんと手を振り払われた。
「遊んでないでさっさと終わらせろ」
「うーわー、冷たー。俺泣いちゃうぞ」
「・・・勝手に泣いてろ」
ああもう、素っ気無いんだから。
でもスコールが素っ気無いのは今に始まったことじゃない。
俺はソファの上、スコールは床に座っていて。
手が届く位置に肩があったから、ゆるり、抱き込んだ。
呆れたのか、無視を決め込んでいるのか。
スコールが何も言わないのをいいことに、鳶色の髪に鼻先を埋める。
鼻腔を掠めるのはこの前買ったばっかりのシャンプーのハーブっぽい香り。
きゅう、と少しだけ腕に力を込めながら、思うこと。
なんで同じもの食べてるのにスコールは細いんだろう、とか、あんまり筋肉着けてもらっても困るけど、とか、そういえば今晩は何を食べよう、だとか、
ホントに泣くとしたらいつ、俺は泣くんだろう、とか。
「スコールが俺を捨てる、とか言い出したら、泣くかも」
もしこの腕の中の存在を失ったら、そしたら俺は泣くのかな。
考えた後に、泣かないだろうな、と思った。
もし本当に俺の世界からスコールが消えちゃったら、多分、悲しすぎて泣くことも出来なくなってしまうだろう。
だからきっと俺はその前に泣く。
彼が別れを切り出すその時に、きっと俺は涙を流す。
それは多分失わないための涙で、悲しさから出るものじゃない。
とっても優しい彼は、俺が今まで彼の前で泣いたことがないのを知っている彼は、多分この手を振り解けまい。
ひどく打算的で、汚い、涙。
「スコール」
「・・なんだ」
「だから、捨てるなんて言うなよ」
俺、泣いちゃうから。