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zekku

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songent[10810/DDFF]

あまずっぱい現パロ17歳ズ
夢を、見た。
幸せな夢。
幸せな、否、俺にとってだけ幸せな夢。





「おはようスコール!」
「ああ、ティーダか」

夢見の悪かった明朝。
寝覚めの悪い月曜の朝。

それでも週の頭から憂鬱になっているわけにもいかない。
頭を切り替えて、晴れやかな表情を作って家を出る。

俺は朝練があるから早起きなのだけれど、別に用事も何も無いのにスコールは早起きだ。
彼の早起きに気付いたのは去年だったか。

いつもどおり朝練に向かう途中に見慣れた背中を見つけて声を掛けたのが最初。
別に理由は無いと素っ気無く答えたスコールと、なんとなくなりゆきで毎朝一緒に登校するようになった。

低血圧なスコールは朝に弱くて、それなのに早く起きて学校に行こうとするのが可笑しかった。



今日の授業の事だとか、今朝見たニュースの事とか、今シーズンの調子だとか。

他愛もない話で盛り上がって。
盛り上がるって言っても一方的に俺が喋っているだけで、スコールは相槌を打つだけだ。
それでもスコールの眼はほんの少し笑っているから、楽しんでくれているのだと思いたい。
他愛の無い、でも幸せな時だったりする。


「じゃあ、また後でな!」
「ああ」


校門の所でスコールとは別れて、俺はそのままグラウンドへ向かう。
ずるりと肩からずり落ちてきたスポーツバックを背負い直す。

ちりちり。
寝覚めの悪い夢の、残滓。


(これはもう、ビョーキ、かも)


瞼の裏にリフレイン。
幸せな悪夢を、リフレイン。

スコールが笑ってる夢だった。
スコールが笑ってて、俺に向かって。
俺を呼んでる夢。
それに俺が応えて、それで。
それで。
さらさらした茶色い髪に触って。
灰色と水色が混じったような瞳が近付いて。
それで。


(あー、あー、もう!)


ふるふると頭を振ってイメージを消す。
耳の辺りが熱を持っている。

(マジ、これは恥ずかしいッス)


夢の中の彼の睫毛がふるり、震える。
長い睫毛だ。

(どんな)

どんな顔して


「どんな顔して話せばいーんスか」


どくりどくり、どくりどくり。
心臓が喧しい。


綺麗に、綺麗に笑うキミ。
夢の中で汚したのは俺。
夢の中でまで欲したのは俺。



最高に幸せで苦しい、綺麗な夢。





(夢と知りせば覚めざらましを)



それでも、夢の続きを望んでしまうのです。


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